みなさんこんにちは!
早速ですが、企業での研究は時間が限られています。
学生のように、夜遅くまで(場合によっては日をまたぐまで)研究することはほとんどありません。
どうしても経時的なデータがほしいために、終夜働くこともゼロではありませんが(笑)
基本的にはそのようなことはないため、企業での研究では効率性がもとめられます。
本日の記事では、効率的にデータを取得するための実験の仕方、使用する機器について解説します。
ハイスループットスクリーニング(HTS)による条件検討
HTSは新薬候補化合物のライブラリー探索によく用いられるイメージがあるかもしれませんが、
有機合成反応のスクリーニングにも用いることが出来ます。
96ウェルプレート(12 x 8)が用いられることが多いと思います。
溶媒、試薬、当量などの条件を一気に検討することが出来ます。
1回目の検討である程度の種類を絞り、2回目の検討で量の検討を実施すると効率よく最適な条件が見つかるかもしれません。
2次スクリーニングでも最適な条件が決まらなければ3次、4次と続けます。
最適な条件が見つかれば、96ウェルプレートからフラスコへスケールを上げて同条件で実施し、結果の再現が得られるかを確認します。
UPLCによる分析
前項ではHTSによる条件検討について解説しましたが、反応は仕込んで終わりではありません。
1つ1つの反応結果を分析する必要があります。
仮に96ウェルプレートを用いて3次スクリーニングで最適条件が見つかった場合、
反応は288個(96 x 3)仕込むことになります。
反応の解析は有機不純物を見るために、HPLCで測定することが多いです。
仮に1つの分析に1時間要するとすると(筆者の所属する部では1時間前後が多いです)、288時間、12日間必要という計算になります。
せっかくHTSにより効率的に反応を仕込んだにもかかわらず、分析が律速になってしまっては時間がもったいないですね。
この問題を解決するのがUPLCです。
HPLC: 高速液体クロマトグラフィー
UPLC: 超高速液体クロマトグラフィー
UPLCはHPLCに比べて高速での分析が可能となります。
1つの分析が10分程度まで短縮できるため、288個の分析は48時間、2日間で終えることが出来ます。
この時間短縮はかなり大きいですね。
機器の導入にはもちろんお金がかかりますが、導入により実験の時間が短縮され、人件費が削減されるため、導入する価値はあると思います。
UPLCだけでなく、SFC(超臨界流体クロマトグラフィー)も効果的です。
実験計画法による条件の最適化
さて、次のような場合を想像してください。
HTSによるスクリーニングの結果、最適な溶媒種、試薬種を決定したとします。
続いて反応条件の最適な条件(溶媒量、試薬量、反応温度や反応時間)を検討するところです。
どのように実験をするでしょうか。
溶媒量を3点、試薬量を3点、反応温度を3点、反応時間を3点とり、それぞれの組み合わせで実験するという手法が考えられます(全ての条件を網羅的に実施するやり方です)。
これでは、81回の実験が必要になります(3 x 3 x 3 x 3)。
HTSを用いればできないことはないですが、実際の条件検討はもっと複雑です。
試薬の種類が増えることもあれば、3点では足りないことももちろんあります。
また、交互作用の効果を評価することが出来ません。
このような場合に実験計画法(Design of Experiments)は有効なツールになります。
実験計画法とは、効率の良い実験方法を設計し、得られた結果を統計解析する手法です。
全ての条件を網羅的に実施するやり方と比較し、少ない実験データからそれぞれの因子が及ぼす影響を明らかにすることが出来ます。
統計か。。。と不安になった方もいるかと思いますが、安心してください。
世の中には便利なツールがあります。
検証したい因子と水準(因子:温度などのパラメータ、水準:何 ℃などの設定値)を入力するだけで、実験を計画してくれて、結果を入力するだけで統計解析してくれるソフトがあります。
有名どころでは、Design ExpertやJMPでしょうか。
もちろん、解析結果を真に理解するには実験計画法の勉強は必須です。
以上、効率的にデータを取得する方法について解説しました。
今回紹介したものを使いこなせれば、少ない労力でプロセスを開発することが可能になるはずです!
有用なものはとことん活用し、短期間でプロセスを開発することを目指しましょう。
本日も読んでいただき、ありがとうございました。
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