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ラボスケールと実機スケールの違い

プロセス化学

みなさんこんにちは!


本日は、ラボスケールと実機の違いについてです。



プロセス化学者の仕事は、実機で問題なく原薬を製造するため、ラボスケールでデータを取得することです。



スケールアップで起こりうる問題を常に意識しながら研究する必要があります。



そのためには、ラボスケールでの実験と実機での製造の違いについて、よく理解しておく必要があります。



ラボスケールと実機製造の違いについて、単位操作ごとに解説していきます。


反応容器
ラボ
ガラス製のフラスコ
みなさんが普段実験で使用しているフラスコです。

実機
数百~数千Lの反応釜
材質としてステンレスやグラスライニングが主に使用されます。
グラスライニングとは、ガラスを鋼板などの金属表面に吹きつけ、ガラスの皮膜を形成させたものです。
実施する反応が酸性か塩基性かによって使い分けられます。
塩基性 → ステンレス製、酸性 → グラスライニングといった具合です。



温度コントロールの難易度
ラボ
簡単
ラボでは水バスやオイルバスを使用して温度をコントロールします。
急な冷却や急な昇温が可能です。

実機
難しい
実機では釜のジャケットに冷媒や熱媒を流して内温をコントロールします。
ジャケットの概略図を書きました。釜はこんなに単純な構造ではありませんので、あくまでジャケットの概念だけ参考にしてください。

スケールが上がるほど熱効率は悪くなるため、急な冷却や急な昇温はできません。
-10 ~ 120 ℃が一般的ですが、この範囲外でも出来ないことはありません。



内部の様子チェック
ラボ
簡単
ガラス製のナスフラスコを使用するので、簡単に外から様態のチェックが可能ですね。

実機
難しい
反応釜は上部に覗き窓があり、そこから内部を確認します。反応液の液面を見ることはできますが、内部の微妙な変化を確認することは難しいです。



撹拌方法
ラボ
スターラーチップや撹拌翼(メカニカルスターラー)
スターラーチップで反応をしている人が多いのではないでしょうか。
実はスターラーチップを用いると反応がうまく進行するが、撹拌翼に変えると再現がとれないことがあります。

それは主に不均一系の反応です。固体/液体の二層系の反応では、固体がチップによってすり潰され、反応が速く進行することがあります。固体の表面積が大きくなるからです。一方、撹拌翼ではすり潰しが起きないため、チップの場合と比較して反応が遅くなります。

実機
撹拌翼
実機では撹拌翼しか用いることが出来ません。



脱水操作
ラボ
分液後にMgSO4やNa2SO4を用いて脱水
分液後は決まって脱水操作を入れますよね。

実機
脱水操作は基本しない
実機で脱水操作をする場合、乾燥剤の仕込み → 撹拌 → 静置 → 乾燥剤のろ過 → 洗浄 → 濃縮といった操作が必要になります。スケールが大きく1つ1つの操作に時間がかかるため、基本的に脱水操作は実施しません。
もし水分が影響する場合、共沸脱水で水を除くことが一般的です。



濃縮
ラボ
エバポレーターを用いて濃縮
みなさんも使用していますよね。

実機
反応釜でそのまま濃縮
実機では分液後の溶液をそのまま反応釜で減圧・常圧濃縮します。また、ラボと比較して濃縮に必要な時間も当然増えます。その間も化合物は安定なのかというデータを事前に撮っておく必要があります。



精製方法
ラボ
カラム精製、再結晶 等
わたしが大学院生の時は、基本的にカラム精製をしていました。

実機
基本的に再結晶化
カラム精製には大量のカラムや溶媒を使用するため、基本的にカラム精製はしません。精製後の濃縮も必要になりますからね。
実機では基本的に結晶化後にろ過で取り出します。結晶化しないものは、溶媒和物や塩を形成させ、結晶化する方法がないかを考えます。



ろ過方法
ラボ
ロートやヌッチェを用いて減圧ろ過
桐山ロート等を用いてろ過しますよね。

実機
遠心ろ過、加圧ろ過
遠心ろ過器を用いることが多いです。聞いたことがない方は、洗濯機をイメージしてもらうと分かりやすいと思います。また、加圧ろ過によるろ過も行われます。こちらは、みなさんが普段実施するロートやヌッチェを用いた減圧ろ過を、密閉容器中で加圧ろ過するイメージです。加圧には通常、窒素が用いられます。



乾燥
ラボ
減圧乾燥
容器に結晶を入れて減圧乾燥します。

実機
減圧乾燥
実機でも一般的には減圧乾燥します。しかし、ラボと違うのは基本的にコニカル乾燥機が用いられる点です。
これは減圧しながら、容器がゆっくり回転する仕組みです。これにより、乾燥機内で結晶が移動し、均一に乾燥することが出来ます。



以上、項目毎にラボと実機の違いを書きました。


反応釜をイメージするといっても、実際に経験しないと、イメージは難しいかもしれません。


ただ、こんな違いがあるんだなー位に思っていただければ嬉しいです。


本日も、読んでいただきありがとうございました。

プロセス化学
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