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プロセス化学のストレステスト

プロセス化学

みなさんこんにちは!


本日はストレステストについて解説します。


虐待実験ともいいますね。


すごい怖い名前の実験ですが、やることはいたってシンプルです。


簡単に言えば、目的化合物がその条件でどの程度安定なのかを確認する実験です。


プロセス化学の基本ですが、実機では実験室での実験の何倍もの時間がかかります。


同じ昇温操作でも、ラボでは3分程度で急に昇温できても、実機では数時間要します。


このように実機では各操作において時間を要するため、その操作ごとに何時間かかっても大丈夫なのかを知るための実験が、ストレステストです。


では各操作において、どのようなストレステストを実施するのかを簡単に説明します。


反応
仮に3時間で終わる反応があったとします。
しかし、3時間後すぐにクエンチができるわけではありません。
3時間後にHPLC用にサンプリング、分析、解析をし、目標を満たしていたらクエンチへと移ります。
はやくても約4時間後にクエンチにうつります。
ラボで実施するストレステストでは、3時間で反応をクエンチするのではなく、しばらく反応条件に付し続け、何時間までなら目的物が分解しない、または不純物が生成しないのかを確認します。
仮に3時間で反応終了後、4時間目で不純物が生成してくるとわかれば、対策する必要があります。
3時間たったら反応温度を下げたり、そもそもの反応温度を下げたりするなどです。



分液
分液でも同様のことが言えます。
ラボではすぐに有機層と水層が分離するのに対し、実機では分層に数時間要することもしばしばあります。
ここでも生成物の安定性が重要になります。
その分液条件で、何時間まで安定なのかを把握しておく必要があります。
分液の温度を上げれば分層性が良くなることもありますが、温度を上げればそれだけ不純物もできやすくなります。
分層性、目的物の抽出効率はもちろんのこと、ストレステストによる目的物の安定性を考慮して分液条件(液量、温度やpHなど)を決めます。
ストレステストの際、有機不純物に着目するのはもちろん大事ですが、溶媒にも着目する必要があります。
例えば酢酸エチルを抽出溶媒に用いている場合、酸性や塩基性条件によっては酢酸エチルが分解することもあります。


濃縮
基本的に分液後の有機層は濃縮します。
これは生成物の晶析率を上げる(収率をあげる)ためです。
濃縮も例外ではなく、実機ではかなり時間がかかります。
みなさんもラボでエバポレーターを使用する際に、はやく濃縮するために温水バスにつけますよね。
それと一緒で実機でも熱をかけて濃縮します。
熱をかけるため、ここでも生成物の安定性が重要になります。
基本的に気化熱により、液温は外温(ジャケット温度)まで上がりませんが、ワーストケースを想定して、ジャケットの設定温度でストレステストをします。


晶析
晶析操作でもストレステストを実施します。
生成物の安定性を確認するのはこれまでの操作と変わりません。
晶析では不純物の析出もしばしば問題になります。
晶析(撹拌)時間が短い場合は純度の良い生成物が取得できていたのに対し、
晶析(撹拌)時間が長くなると生成物の純度が落ちてしまうことがあります。
これは、目的の生成物だけでなく不純物も析出してしまうからです。
晶析時間の経時的なデータを取得し、何時間以内にろ過しなければならないと設定します。


乾燥
乾燥でも生成物の安定性が重要です。
これまでの操作で純度の高い目的物を得たとしても、最後の乾燥で不純物が増えてしまってはこれまでの努力が水の泡です。
乾燥操作では乾燥時間を短縮するために熱をかけます。
何 ℃まで熱をかけられるのか、何時間まで生成物が安定なのかを考慮し乾燥条件(温度、時間など)を決定します。


以上、各操作でなぜストレステストが必要なのかを解説しました。


ただストレステストを実施するのではなく、何のためにするのかをよく考えて実施することが大事です。


基本的に全ての操作で化合物の安定な時間がわかっていることが望ましいです。


そうすることで、何かトラブルがあっても柔軟に対応できるからです。


本来は反応のクエンチ後に分液まで実施する予定であったが、仕込みや反応でトラブルがあり、クエンチまでしか出来ないということがあったとします。


クエンチ後の溶液が安定であることが事前に分かっていれば、分液は次の日に実施すると即座に判断することが出来ます。


しかし、クエンチ後の溶液の安定性が不明であれば、その日に無理やり実施するか、安定であることを祈って次の日に分液するという判断が必要になります。


こういったトラブルに柔軟に対応するために、各操作での化合物の安定性をストレステストにより明らかにしておくことは重要であると言えます。


以上、ストレステストの重要性について解説しました。


ストレステストはそれ自体を主目的とした実験をするのではなく、大きいスケールで実施した際に一部の溶液、懸濁液、結晶を抜き取り、別途ある温度で撹拌(保管)するだけで十分です。


効率的にストレステストを実施し、化合物が安定であると自信を持っていえるプロセス開発を目指しましょう。


本日も読んでいただき、ありがとうございました。

プロセス化学
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