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原薬の出荷試験

プロセス化学

みなさんこんにちは!


今日は原薬の出荷試験について解説します。


原薬の製造が無事に終わると、ほかの施設に出荷しても問題ないかどうかを出荷試験により判断します。


つまり、製造した原薬が規格に適合しているかどうかを判断するということです。


この記事では、どんな試験項目があるのか、その典型的な試験方法について解説します。


必須試験項目と必須試験項目以外の試験がありますので、それぞれ分けて解説していきます。



必須試験項目

性状
これは読んで字のごとく、性状を見る試験です。
目視により、原薬の色や形状を定性的に評価する試験です(白色の粉末など)



確認試験
製造した原薬が本当に目的の原薬であるのかを確認する試験です。
その原薬を特異的に確認できる試験方法が設定されます。
赤外吸収スペクトル方(IR)が多いイメージです。
既知の標準物質とIRスペクトルが等しいかどうかで判断します。
標準物質はNMRやMSなどで確実にその化合物であることを別途示す必要があります。
(標準物質の構造が違っていたらもともこもないですからね)



有機不純物
HPLCなどにより、原薬中の有機不純物を測定します。
プロセス開発をする中では、一番気にする試験項目かもしれません。



重金属試験
原薬中の金属不純物を測定する試験です。
重金属が酸性条件下で硫化ナトリウム試液により呈色することを利用します。
しかし、この手法はどの金属が入っているかという特異性はありません。
最近ではICP-MSにより金属ごとに定量できることから、各金属ごとの管理に移行しつつあります。
各金属ごとの許容値はICH Q3Dで検索して覗いてみてください。



強熱残分
原薬中の無機物の定量を目的とする試験です。
原薬を硫酸の存在下で強熱し、揮発せずに残留する成分を測定します。
原薬が塩を形成している場合(Na塩など)、そのカウンターイオンも同時に定量されてしまうため、試験は実施しません。



残留溶媒
原薬中に残留する溶媒を測定する試験です。
ガスクロマトグラフィー(GC)により試験します。
各溶媒の許容値についてはICH Q3Cのガイドラインを参照してください。
私が意外だと思ったのは、ベンゼンは許容値が相当厳しく設定されており、
プロセスにはほとんどされないということです。
大学時代は普通に使っていたので。。。



含量
試料中の原薬を定量する試験です。
HPLCと標準品を用いて定量します。
残留溶媒などの不純物が多く混在すると、定量値は低くなってしまいます。



必須試験項目以外の試験

粒子径
原薬の粒子径が、製剤の溶出率、生物学的利用率や安定性に影響を及ぼす場合に試験します。
粒度分布測定器を用いて測定します。



結晶多形
こちらも結晶多形が製剤の溶出率、生物学的利用率や安定性に影響を及ぼす場合に試験します。
確認試験のIRで結晶多形まで識別できることもあります。
もしIRで識別出来ない場合はXRDなどによって結晶多形を確認します。



水分
原薬に吸湿性がある場合や、原薬が水和物である場合に試験します。
カールフィッシャー法は水分を特異的に測定できるため、よく用いられます。




以上、出荷試験に関わる試験項目について解説しました。


プロセス化学者はこれらの試験項目の全ての規格を満たすプロセスを開発する必要があります。


プロセス開発の過程でプロセス化学者が触れる分析装置についても解説しているため、こちらも読んでいただけると幸いです。ほとんどの装置がこの出荷試験に関わる装置です。
http://eggman87.com/analysis-equipment/


常に出荷試験の項目を意識しながらプロセスを開発するよう心がけましょう。


本日も読んでいただき、ありがとうございました。

プロセス化学
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