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結晶化のポイント

プロセス化学

みなさんこんにちは!


本日は結晶化のポイントについて解説します


プロセス開発にとって、結晶化は極めて重要な工程です。


医薬品は高純度が求められます。


高純度の医薬品を得るためには、精製する工程が多く組み込まれていることが大事です。


結晶化は精製が期待される工程であるため、結晶化のポイントを理解しておけば純度の良い医薬品を合成できることでしょう。



少し話は変わりますが、みなさんが実験によって得た固体、それは結晶でしょうか?


結晶とは分子が空間に規則正しく配列された固体をさします。


一方、分子が空間に不規則に並んだ固体はアモルファスと呼ばれます。


結晶とアモルファスは外観では判断できないことが多いため、XRD偏光顕微鏡で確認することが一般的です。


結晶はアモルファスよりも化学的に安定であり、高い精製効果が期待されます。


それでは本題の目的物を固体として得る方法について紹介します。


濃縮乾固
最も基本的な方法です。
目的物が固体の場合、溶液を濃縮乾固するだけで簡単に得られます。
製造釜では基本的に乾固は出来ないため、ある程度まで濃縮し、懸濁液をろ過して固体を得ます。


酸や塩基を用いた塩化
目的物を塩化する方法です。
目的物が酸性の官能基を有する場合は塩基を、塩基性の官能基を有する場合は酸を添加することで塩を形成させ、結晶化させます。
添加する酸や塩基はスクリーニングで網羅的に検討します。
その中で結晶化した酸や塩基があれば、溶媒、温度などの詳細な条件を検討します。
精製効果、収率や後工程を考慮し、どの酸や塩基を用いるかを判断します。



溶媒和物への誘導
本来は油状の化合物であっても、ある溶媒と溶媒和物を形成することで結晶として析出する場合があります。
こちらも塩化の検討と同様にスクリーニングにより検討します。
加熱溶解後、冷却により析出させるという手法が一般的かもしれませんが、
濃縮乾固後に溶媒添加を繰り返すという手法も効果的です。
溶媒和物の検討では乾燥に注意が必要です。
乾燥中にその溶媒が結晶格子から抜け、無溶媒和物になってしまう可能性があるからです。
溶媒和物を形成しているかどうかはNMRやGCによって確認できます。
既知の溶媒和物はXRDの回折パターンが報告されているものと一致するかを確認します。



アモルファス化
アモルファスは逆滴下により得られるケースが多くあります。
良溶媒に溶解後に、その溶液に貧溶媒を滴下する手法を順滴下といい、
良溶媒に溶解後に、その溶液を貧溶媒中に滴下する手法を逆滴下といいます。
実験のコツとして、滴下はシリンジポンプなどを用いてゆっくりと行い、撹拌は強めに設定しておきます。



再スラリー
一度単離した結晶を溶解させずに、懸濁撹拌することを再スラリーといいます。
スラリーとは懸濁液のことを指します。
再スラリーは再結晶化よりも精製効果は低いことが多いですが、手軽に実施できるというメリットがあります。
結晶表面に付着した不純物、着色成分を除去することが出来ます。
様々な溶媒で懸濁撹拌後、上澄み濃度をHPLCで測定するだけで簡便に再スラリーの効果を確認できます。



以上、目的物を固体として得る方法(+ 再スラリーについて)を紹介しました。


最終原薬を得る工程で結晶化する場合、不純物除去の他に結晶形について考慮しなくてはなりません。


これについてはまた別の記事で紹介したいと思います。


繰り返しになりますが、結晶化工程は純度の高い原薬を得るためには欠かせないプロセスです。


結晶化させるために遠回りのルートを採用することもあります。


結晶化を利用し、患者さんが安心して服用できる高純度の原薬を得るためのプロセスを開発しましょう。


本日も読んでいただき、ありがとうございました。

プロセス化学
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