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原薬の粉砕

プロセス化学

みなさんこんにちは!


本日は原薬の粉砕について解説します。


粉砕をすることで、結晶が細かくなり結晶表面積が大きくなります。


これにより、化合物の溶解性体内吸収性が高まります。


また、製剤化工程で使用する原薬の物性や流動性を均一化する目的でも行われます。


粒子径は原薬の重要な品質特性として位置付けられることが多いです。


最終工程の再結晶で目標粒子径の原薬が得られれば一番良いのですが、難しい場合に粉砕をします。


また、最終原薬の乾燥において原薬中の溶媒が飛びにくい場合にも、粉砕が用いられます。


粉砕機器には大きく分けて2種類あります。


ドライミリングウェットミリングです。



ドライミリングにはハンマーミルやジェットミルなどがあります。


ハンマーミルでは約20 μm程度まで粉砕することができます。
ブレードやピンを高速で回転させているところに固体を投入します。
そうすることで物理的に固体が粉砕されます。
粉砕された粉体は出口から取り出します。
回転速度、スクリーンや投入速度によって目的粒度をコントロールします。
熱の発生を伴いますので注意が必要です。


一方でジェットミルは10 μm以下まで粉砕することができます。
高圧ガス(主に窒素)を吹き込み、壁との衝突や粉体どうしを衝突させて粉砕します。


これらは目的粒度により使い分けます。


ドライミリングと対になるのがウェットミリングです。
ウェットミリングには、高速回転する機器と結晶との衝突する力を利用するタイプや、
メディア(ビーズやボール)を攪拌させて結晶をすりつぶすタイプなどがあります。
ドライミリングは一度固体を取り出してから粉砕するのに対し、ウェットミリングはろ過前に粉砕し、目標粒度を達成後にろ過するすることができるため、工程の短縮に繋がります。


目標粒度を到達するために必須である粉砕ですが、注意点があります。


ドライミリングでの注意点はコンパクション粉塵爆発です。


粉砕時の物理的衝突により、粉砕機の内部の温度が上昇します。
この温度上昇により、結晶がアモルファス化し、粉砕機内部に固着してしまうことをコンパクションといいます。
これにより粉砕機が止まってしまいます。
それよりも、せっかく苦労して得た結晶がアモルファス化してしまい、無駄になってしまいます。


粉塵爆発についてはイメージしやすいかと思います。
粉砕により結晶が細かくなり、粉砕前よりも表面積が大きくなります。
表面積が大きくなるため、より着火のリスクがあがります。
化合物には最小着火エネルギーというものが存在し、最小着火エネルギーは測定することができます。
事前に最小着火エネルギーを測定し、粉塵爆発のリスク評価をします。
リスクが高ければ、窒素を使ったジェットミルを使用するか、ウェットミルによる粉砕を実施します。


ウェットミルの注意点はろ過性です。
ろ過前に粉砕により粒子径をコントロールできることが利点と述べましたが、
ろ過前に粒子を細かくするということは、ろ過時の目詰まりを起こすリスクが高まるということです。
事前にラボでろ過性を評価するべきです。


また、粉砕により結晶形が変わることもよくあります。
粉砕により目的の結晶形を意図的に得ることもあれば、目的の結晶形を粉砕したら目的以外の結晶形が得られてしまうこともあります。


ラボスケールでの検討では、粉砕後に粒度だけでなく結晶形も測定することをお勧めします。



以上、粉砕の種類や注意点について解説しました。


原薬に求められる品質特性やそれぞれのリスクを考慮し、適切な粉砕方法を選定します。


粉砕により適切な原薬が得られれば、原薬の製造は終わったも同然です。
(残留溶媒低減のための粉砕ならば、再乾燥が必要な場合もありますが)



本日も読んでいただきありがとうございました。








プロセス化学
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