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原薬中の不純物


みなさんこんにちは!


本日は原薬に含有する不純物について紹介します。


皆さんは不純物と聞くと何を思い浮かべるでしょうか?


主反応ではなく、副反応で生じる副生成物を思い浮かべる方が多いと思います。


実は、プロセス開発においては、上記の副生成物の他にも、様々な不純物があります。


この記事を読み、原薬に含まれる不純物はどんなものがあるか。


また、どのように測定し、どのように対策をするのかについて理解していただければと思います。


原薬に含まれる主な不純物について、今日は5つ紹介します。


① 有機不純物
類縁物質とも呼びます。文字通り、有機化合物の不純物です。測定方法は主にHPLCです。
有機不純物は後処理(分液や結晶化)で除去され得るため、その手法をプロセスに組み入れるという対策があります。


これが原薬に含有してしまう主な原因は下記のとおりです

原料に不純物が含まれている
原料は純度が高いものでないことが多いため、購入した原料に有機不純物が含有していることはよくあります。筆者の体感ですが、海外から購入したものには多く有機不純物が含有しているイメージがあります。解決策としては、きれいな原料が購入できるメーカーを探したり、コストが掛かってしまいますが、一度その原料を精製してから使用したりするという方法があります。


反応の副反応で生じる
これはイメージしやすいですね。望みの反応ではなく、副反応によって有機不純物が生じてしまうことがあります。これに関してはプロセス化学者の腕の見せどころであり、いかに不純物が生じない反応条件を設定するかが大事です。


反応において原料が残存する
使用する原料も有機不純物になり得ます。原料が3%残っている状態でクエンチし、原薬を得たところ、その原料が原薬中に含有してしまったというケースがあります。この対策としては、原料がさらに減るまで反応を停止しない、反応剤を増やし原料が減るようにする等が挙げられます。



②光学異性体
目的物がエナンチオマーである場合、望みではない立体化学を有する不純物のことを指します。
測定方法は、キラルカラムを用いたHPLCが一般的です。HPLCで定量する場合、それぞれの異性体が必要であるため、それぞれを合成する必要があります
除去方法としては、キラルアミンやキラル酸を用いた再結晶法が一般的です。また、最近ではDKR (Dinamic Kinetic Resolution、動的光学分割) による分割もしばしば見られます。


光学異性体が原薬に含有してしまう主な原因は下記のとおりです。

反応のエナンチオ選択性の低さ
反応のエナンチオ選択性が低いと、望みとは逆の立体化学を有する化合物が生じ、この化合物が後の結晶化等で除去されないということがしばしば見られます。多少高価な金属やリガンドを用いても、高エナンチオ選択的な反応を使用・開発することが望まれます。



使用原料の光学純度の低さ
使用する原料の光学純度が低ければ、そのまま生成物の光学純度に反映されます。どの程度の光学純度が必要であるかは、早めに見定める必要があります。場合によってはメーカーに交渉し、購入する原料の光学純度を上げてもらう必要もあります。



③無機不純物
残留金属
原薬は基本的に窒素や酸素原子のようなヘテロ原子を含んでいるため、配位子としても作用します。そのため、パラジウム等の金属を反応に用いた場合、その金属が原薬中に残る可能性があります。
ICP-MSという装置を使用すれば、金属毎に定量することが可能です。
金属は活性炭や金属スカベンジャーを利用して除去が可能です。活性炭は望みの生成物も吸着してしまうのに対し、金属スカベンジャーは金属を特異的に吸着するため、望みの生成物には影響を与えないという利点があります。



残留無機塩
炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムや塩化アンモニウムなど、普段皆さんが使用している無機塩は、プロセス化学でもよく用いられます。
無機塩はイオンが検出されるものであればイオンクロマトグラフィーで測定可能です。
水に溶けるものであれば、分液回数を増やし、原薬への含有を防ぎます。



④残留溶媒
反応にしろ再結晶化にしろ、基本的には溶媒を使用します。その溶媒が、乾燥により除去されずに原薬中に含有してしまうということがよく起こります。
溶媒はGCを用いて測定することが可能です。
乾燥時間を伸ばす、乾燥温度を高くする等が対策の第一選択です。それでも難しい場合は、結晶を粉砕し、細かくした状態で乾燥します。



⑤変異原性不純物
不純物の中でも、特に変異原性を有する不純物を変異原性不純物といいます。
発がん性を持つことがあるため、非常に厳しい規格が設けられることが普通です。
規格が厳しいため、非常に少ない量を観測するためLC-MSなどの高感度な分析機器を用いて測定されます。
再結晶化で除去するなどの対策がありますが、そもそも使用しないプロセスを開発することが好ましいです。


以上、原薬に含有する不純物について紹介しました。


私が学生の頃は、不純物と言えば勝手に有機不純物を想像していました。


不純物と一言でいっても、様々な種類があるということを頭に入れて研究に励んでください。


本日も読んでいただきありがとうございました。


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