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インプロセスコントロールとは

みなさんこんにちは!


本日は、インプロセスコントロールについて解説します。


解説の前に、原薬の一般的な製造プロセスを復習します。


原料や溶媒を仕込む → 反応をモニタリングする → クエンチする → 抽出する → 液を濃縮する → 晶析操作をする → ろ過する → 乾燥する

でしたね。


さて、みなさんが実際に作業することを想像してください。


何を根拠に次の操作に移行するでしょうか。


反応液がどうなったらクエンチするでしょうか。


何をもって抽出・洗浄を終了とするでしょうか。


どこまで濃縮するでしょうか。


以下同様です。


想像できたでしょうか? インプロセスコントロールを理解する上で大事なことです。


もう1つ次の例を考えてみてください。


禁水反応を仕込むとします。


ラボでは脱水溶媒を使用し、水分が入らないようにケアをして仕込むでしょう。


それでうまく行けば問題ないし、うまく行かなかった場合は水分ケアが足りなかったのかなと考察します。


大スケールで実施する実製造では、そのような結果論はもちろん通用しません。


1回の製造にかなりの費用がかかっていますからね。


プロセス化学者はそのプロセスがうまくいくかどうかを必ず数値で示さなくてはなりません。


先の禁水系の反応でいえば、原料を仕込む前に溶媒の水分値を測定します。


その水分値が○○ppm以下であれば原料を仕込むという具体的な管理値を設定します。


このように、再現性に影響を与えうる因子に期待値を設定し、管理することをインプロセスコントロール(以下 IPC)と言います。


ぼんやりとでもイメージを掴めたでしょうか?



さらに理解を深めるため、各操作においてどのようなIPCを設定するのかを説明します。


仕込み時のIPC
水分値
反応釜へ仕込んだ後の水分値を設定します。
仕込む前は水分が少なかったが、仕込んだ後に水分が多くなっては意味がないからです。
反応釜の乾燥が不十分で、水が付着していた場合にそのようなことが起こってしまいます。


反応時のIPC
原料残存率
クエンチする前に満たすべき原料残存率です。
例えば、反応で多くの原料が残っているのにクエンチしてしまった場合、原料が最終工程までに除去されずに、原薬中に多く残ってしまいます。
原料は最終原薬中の有機不純物になりうるということを忘れないでください。
具体的には、原料が○○%以下になったらクエンチ操作に移る、というように設定します(測定は基本的にHPLC)。
管理値を満たさない場合、反応時間を延長したり、試薬を追加したりといった対策を講じます。


抽出・洗浄時のIPC
pH
pHによって目的物が大量に水層にロスしてしまう、目的物が分解してしまうことがあります。
また、不純物の除去効果が変わってしまう場合もあります。
具体的にはpH 7.0~9.0というように幅をもたせて管理値を設定します。
満たさない場合は酸や塩基を添加するという措置をとります。


濃縮および溶媒置換時のIPC
溶媒組成比
晶析時の溶媒組成により、原薬中の不純物残量が変わってしまう場合があります。
そのような場合は、濃縮時や溶媒置換時に溶媒組成のIPCを設定する必要があります。
溶媒置換を例にあげます。
抽出溶媒がTHFで、晶析はEtOAcで実施したいため、溶媒置換するという操作を考えます。
THFが残ってしまうと、次の晶析で不純物の除去効率が低下してしまうと仮定します。
実際の操作としては、THFを濃縮しつつEtOAcを添加していきます。
THF量はGCで測定可能であるため、THFが○○%以下になるまで、溶媒置換を続けるというようにIPCを設定します。
水分値が影響する場合も同様です。


晶析時のIPC
上澄み濃度
結晶ろ過操作に入る前に満たすべき上澄み濃度をIPCとして設定します。
具体的には、上澄み濃度が○○ mg/g以下になったらろ過操作にうつるというように設定します。


乾燥時のIPC
残留溶媒
使用した溶媒が結晶中に残留した場合、次反応に影響を及ぼす場合に設定します。
具体的には溶媒(メタノールなど使用した溶媒)が○○ppm以下になったら乾燥を終了するというように設定します。

乾燥減量
乾燥終点を管理する場合に設定します。
乾燥減量とは単位時間あたりに重量がどれくらい減ったか(乾燥により溶媒がとんだか)を示します。具体的にはLOD 0.5%以下になったら乾燥終了というように設定します。



以上、各操作においてどのようなIPCを設定するかについて具体的に紹介しました。


今回紹介したのは一般例ですので、各原薬の製造毎に設定する必要があります。


何が品質に影響するのかをラボデータで見出し、適切なIPCを設定することが大スケールで失敗しないために必要です。


何を管理する必要があるのかを明確にし、研究を進めたいですね。


本日も読んでいただき、ありがとうございました。


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