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環境に配慮したプロセス開発

プロセス化学

みなさんこんにちは!

本日は、環境に配慮したプロセス開発について解説します。

みなさんは普段の実験で環境負荷について考えているでしょうか。

私が学生の頃は微塵も考えていませんでした!笑

この記事を読み、環境、グリーンケミストリーについて考えるきっかけになればと思います。


では早速

環境負荷に関して、日頃の実験で関連することとして、ジクロロメタンの使用などが例として挙げられます。

ジクロロメタンは反応溶媒や抽出溶媒として頻繁に用いていると思います。

しかし、ハロゲン化合物は化学的に安定で、難燃性であり、高温での廃棄処理が必要になります。

また、適切に処理をしなければダイオキシンが発生する恐れがあります。

これらの観点から、ハロゲン系溶媒の使用はプロセス開発では避けられます。

また、廃棄物処理に関連して、副生成物を避けることも考慮します。

アトムエコノミーという言葉を聞いたことがあるでしょうか?

これはTrostらにより提唱された概念であり、原料中の元素がどれだけ生成物中に取り込まれているかということを示すものです。

式に表すと、以下の通りです。



また、以下にアトムエコノミーが良い反応と悪い反応の概略図を示します。

まずアトムエコノミーが良い反応ですが、反応式の左辺の原子全てが右辺の生成物に組み込まれています。


次にアトムエコノミーが悪い例ですが、置換反応が進行し、生成物とともに廃棄物が生成しています。



いい反応例のようにいかに廃棄物(副生成物)がでない反応を組み合わせて、原薬を得るためのプロセスを組み立てるかを考える必要があります。

アトムエコノミー100%の理想的な反応もあります。

代表的な例は、ペリ環状反応であるDiels-Alder反応です。

原料のdieneとdienophileが100%生成物に組み込まれていることが分かりますね。

他にも、アトムエコノミーが100%の反応は多数あります。ぜひ考えてみてください。


アトムエコノミーは原料と生成物のみに着目した概念です。

しかし、実際の製造では、反応に直接関与する原料の他に下記のようなものが用いられます。

  • 反応溶媒
  • 後処理の試薬
  • 分液時の抽出溶媒
  • 分液時の洗浄溶媒
  • 晶析溶媒
  • 結晶洗浄溶媒 等

アトムエコノミーにはこれらが使用が反映されていません。

これらを考慮した別の指標があります。

Sheldonらが提案したE-ファクターです。

E-ファクターとは生成物1 kg当たりの廃棄物の重量(kg)です。

E-ファクター = 20とは、1 kgの生成物を得る際に、20 kgの廃棄物が生じることを示します。

E-ファクターを下げるために、いろいろな工夫ができます。

  • 反応溶媒を減らす
  • 当量反応ではなく、触媒反応を採用する
  • 収率を上げる
  • 保護基の利用を下げる 等


E-ファクターという概念があるんだなー程度に頭に入れてもらえればと思います。


最後に、ポール・アナスタスによって提唱されたグリーンケミストリーの12ヶ条について紹介します。化学工業のあり方を目指す行動指針です。

  1. 廃棄物は出してから処理ではなく、出さない
  2. 原料をなるべく無駄にしない合成をする
  3. 人体と環境に害の少ない反応物や生成物にする
  4. 機能が同じなら、毒性のなるべく少ない物質をつくる
  5. 補助物質を減らし、無害なものを使う
  6. 省エネルギーを心がける
  7. 原料は枯渇資源ではなく再生可能な資源から得る
  8. 途中の修飾反応はできるだけ避ける
  9. できる限り触媒反応を目指す
  10. 使用後に環境中で分解するような製品を目指す
  11. プロセス計測を導入する
  12. 化学事故につながりにくい物質を使う


書いてある通りなので特に解説はしませんが、11の「プロセス計測」だけピンと来ない方が多いと思います。

プロセス計測とは、反応をin situで計測し、余分な試薬は使わないようにするという考え方です。
反応をモニタリングし、必要量だけをきっちり使用するという意味です。



以上、環境に配慮したプロセス開発を解説しました。

普段し実施ている実験は環境に良いものなのか、という点を考えるきっかけになればと思います。

読んでいただき、ありがとうございました。

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