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リニアールートとコンバージェントルート

プロセス化学

みなさんこんにちは!


今回は「リニアールート」と「コンバージェントルート」の違いについて解説します。


「直線的合成法」と「収束的合成法」と言われたりもしますね。


基本的に、コンバージェントルーとのほうが好ましいと言われています。


下記の具体例を見てみましょう。


どちらもA〜Eを用いて、ABCDEという化合物を合成するルートです。



各工程において収率を90%と仮定すると


リニアールートでは4工程で総収率66% (100 x 0.9 x 0.9 x 0.9 x 0.9) であるのに対し


コンバージェントルートではAから見ると3工程で総収率73% (100 x 0.9 x 0.9 x 0.9)


であり、コンバージェントルートのほうが優れていますね。


気づいた方もいるかも知れませんが、これは側鎖合成(DEの合成)が考慮されていません。


しかし、ほかの因子が同等であると仮定した場合、
実際にコスト試算をするとやはりコンバージェントルートのほうが安価に合成が可能になります。


また、コスト面の他にもコンバージェントルートの利点があります。


それは、別の工程を同時に実施できるということです。


リニアールートでは、前の中間体が合成された後でなければ、次の反応を実施することが出来ません。


しかし、コンバージェントルートでは A + Bの反応を行うのと同時に、D + Eの反応も実施することが可能です。


これは実製造でも大きな利点であり、目的の原薬を得るのに要する期間がかなり短くなります


生産性を高めるためにできる工夫の一つになりますね。


また、総収率が同じ場合、低収率の反応は前工程に組み込むのが一般的です。


そのほうが後工程で使用する試薬や溶媒量が少なくなりますからね。


あくまで総収率が同じ場合の比較です。もちろん、収率をあげる検討をすることが最優先です。


リニアールートとコンバージェントルートの違いについて理解していただけたでしょうか?


コンバージェントルートのほうが良いと述べましたが、

  • 実施する反応の安全性
  • 中間体の安定性
  • 他社特許への抵触
  • 特殊設備
  • 高価な原料や試薬の使用

などを考慮し、総合的に判断する必要があります。


ルートはいくらでも設定し直すことは可能ですが、できるだけ近道でゴールするためにも、最初から生産性の高いルートを選定できる化学者になりたいですね。


本日も、読んでいただきありがとうございました。

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