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プロセスの開発方法



みなさんこんにちは!


本日はプロセスの開発方法ついて解説します。


小さいスケールで製法を見出して、それを大きいスケールでやればいいんでしょ?


と思う方もいるかもしれません。


あながち間違いではありません(笑)
でも、それで上手くいく場合もありますが、大半はそうではありません。


どんなことを意識して研究するかを含め、製法開発方法を簡単に説明します。


今回は小スケールでの製法開発にとどめ、スケールアップについては次回の記事で紹介します。


では、時系列順に説明していきます。あくまで一例ですので、全てがこの通りとは限らないという点にご留意ください。



机上調査
まずは文献等を用いて机上調査をします。どういうルートなら効率よく合成できるかを考えることはもちろん大事ですが、企業のプロセス開発においてもう1つ大事なことがあります。
それは 特許 です。これは大学の研究ではあまり意識していないと思います。特許に抵触する製法では、実際に製造できませんので、その特許を回避した製法を開発する必要があります。
また、ルートを1つに絞るのではなく複数ストックしておくことが大事です。そうすることで、あるルートがうまくいかなくても、すぐに別のルートに切り替えることが可能です。



コスト試算
机上調査である程度製造ルートを絞ったら、製造にかかるコストを試算をします。
使用する原材料費、人件費、減価償却費などから製造コストを算出し、どの程度の利益があるのかを大まかに計算します。
コスト試算することで、この工程がコストの大半を占めるから収率は何%以上でなければならない等の情報を得ることが出来ます。



条件検討
ルートが決まったら、小スケールで検討します。ここでは溶媒、反応剤等のスクリーニングを実施します。反応成績から、溶媒種や反応剤種を選定します。検討する因子数にもよりますが、膨大な量の実験数になる可能性もあります。そのため、スクリーニングキットを使用し、効率よくデータを取得することが望まれます。
また、実験を仕込むだけでなく、分析も必要となります。HPLCによる分析が一般的ですが、このスクリーニング段階ではUPLC等、短時間で測定できる測定機器を使用することをおすすめします。



条件最適化
溶媒種、反応剤種等のカテゴリカルなパラメータが設定できたら、次はニューメリカルなデータを取得します。
カテゴリカルデータ:数や量で測れない情報(溶媒、反応材など)
ニューメリカルデータ:数や量で測れる情報(溶媒、反応剤の当量、温度など)
実験計画法に基づいてデータを取得することをおすすめします。実験計画法については、長くなってしまうため、別の記事で紹介したいと思います。
好ましいのは、収率が高く、不純物が全く生成しない条件ですが、これがなかなかうまくいきません。
収率を高くしようとすると不純物が多く生成してしまう、または不純物の生成を抑制しようとすると収率も低くなってしまうということがよくあります。
後の工程での不純物の除去具合や製造コストなどから、どちらを優先するかを考えます。



後処理の検討
分液 → 濃縮 → 晶析という操作が基本的です。もちろん、ワンポット反応やテレスコーピングで次工程につなげるという効率的な手法が望まれますが、今回は一般的な後処理で説明します。
分液では何を除きたいのかを明確にします。反応に用いた試薬、反応で生成した副生成物、反応に用いた溶媒などです。
実機での濃縮ではラボ実験よりも非常に時間がかかります。その間、生成物は安定であるのかについて事前にデータを取得する必要があります。濃縮時の外温(ジャケット温度)で溶液を長時間撹拌し、安定かどうかを確認します。
晶析については何種類か方法があります。過飽和がついている溶液に種晶を接種、過飽和がついている溶液からの自然起晶、貧溶媒滴下による晶析などです。
いずれの場合でも、事前に溶解度データを取得する必要があります。
晶析は不純物を除去するチャンスです。不純物の除去効率と収率を考えて、晶析方法を選定します。



乾燥
乾燥温度、乾燥時間を検討します。ここで大事になってくるのは生成物の安定性です。乾燥では基本的に熱をかけますので、ここで不純物が生成してしまっては、これまでの努力が水の泡です。何℃で何時間までなら安定であるのかを事前に確認します。
また、乾燥の目的は残留溶媒をなくすことです。反応、分液や晶析で使用した溶媒が乾燥によりなくなっているかどうかをGCにより確認します。



以上、工程ごとにどのような実験をするのかを説明しました。


もちろん、原薬は得て終わりではなく、製剤化して初めてお薬になります。


そのため、製剤化に必要な物性データを求められることもあります。


晶癖、粒度、結晶多形などがあります。


これらについてはまた別の記事で紹介させていただきます。


プロセス化学者が普段どんな事を考え、どんな実験をしているのかを少しでも分かっていただけたら嬉しいです。


本日も、読んでいただきありがとうございました。

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