みなさんこんにちは!
本日はプロセス化学に必要な分析装置について解説します。
プロセス化学の基本は有機化学なんだし、有機化学の知識があれば大丈夫でしょ。
と思っている方もいるのではないでしょうか?
確かに、プロセス化学の基本は有機化学、特に有機合成化学です。
しかし、それだけではプロセス開発は出来ません。
開発の過程で必要となる分析装置について紹介します。
これらを使いこなすことで、より効率的にプロセスを開発することができるようになるはずです。
HPLC(高速液体クロマトグラフィー)
これはすでに使用している方もいるのではないでしょうか?
HPLCは目的化合物の定量や、含有する有機不純物の挙動を確認するために用います。
プロセス開発者は毎日使用しているのではないでしょうか。
一番触れる機会が多い装置かと思います。
GC(ガスクロマトグラフィー)
反応に使用した溶媒、晶析に使用した溶媒は原薬中の不純物になりうることを以前紹介しました。
http://eggman87.com/api-impurity/
GCはその残留溶媒を確認するためによく用いられます。
もちろん、溶媒だけでなく有機不純物の定性や定量に用いられることもあります。
XRD(X線回折装置)
化合物の中には結晶多形が存在するものがあります。
結晶多形とは、同一分子であるものの結晶中で分子の配列状態が異なるもののことを言います。
医薬品開発では、この結晶多形は重要になります。
その理由として、結晶多形が違えば溶解性や安定性が異なるからです。
そのため、プロセス開発において結晶多形をしっかり制御する必要があります。
XRDではX線を試料に照射し、散乱されたX線は、その原子・分子の配列状態によって特有の回折パターンを示します。
結晶多形により、XRDの回折パターン(測定結果)が異なるため、結晶多形を識別することが出来ます。
粒度分布測定器
原薬の重要な固体物性として粒度があります。
粒度分布とは、測定するサンプル中に「どれくらいの大きさの粒子がどれくらいの割合で存在するか」を示す指標です。
粒子の大きさが変わると、表面積が変わり、溶解速度が変わります。
体内での溶解速度が変わってしまっては、医薬品としてよくありませんね。
そのため、プロセス開発では対象原薬の粒度が求められます。
晶析でうまくコントロールできることもあれば、結晶の粉砕により目標粒度の原薬を得るという手法もあります。
その粒度を測定するための装置が粒度分布測定器です。
IR(赤外分光光度計)
IRも皆さん使用経験があるのではないでしょうか。
筆者も論文を書く際、化合物のIRを一日中測定していた記憶があります。
プロセス開発でもIRを使用します。
目的化合物の標準品と同等のスペクトルを示すか、目的の官能基を有するかなどの確認に使用します。
DSC(示差走査熱量計)
これはあまり馴染みのない機械だと思います。
プロセス開発では安全性評価がとても大事です。
用途は様々ですが、安全性評価の初期検討として使用することがあります。
DSCでは、その化合物が何 ℃でどれくらいの発熱・吸熱があるかを定量的に測定することができ、
自己反応性物質であるかどうかの評価を手軽に実施することが出来ます。
原理についてはSHIMADZUさんの解説を参考にしてください。分かりやすいと思います。
https://www.an.shimadzu.co.jp/ta/support/faq/fundamentals/dsc.htm
水分測定装置
カールフィッシャー試薬を用いた測定が一般的かと思います。
溶媒、反応液、分液後の有機層、晶析溶媒など水分が重要である場合があります(禁水反応などがわかりやすいですね)。
その場合、水分値は○○%以下である必要があるというように、データ(数値)で示す必要があります。
水分測定装置で水分を測定し、データを積み重ね、水分値の設定値を定めます。
水分測定装置を所有する研究室もありますね(高価ですが)。
筆者は会社に入って初めて存在を知りました。
プロセス開発者がプロセスを開発する過程で使用する分析装置はざっとこれくらいかと思います。
原薬を評価するという目的では、これ以上に様々な機械を使用します。
それらはプロセス開発者が触れることもあれば、分析専門の部署が測定することもあります。
それは、またの機会に解説しようと思います。
以上、プロセス開発者がプロセスを開発する過程で使用する分析装置について紹介しました。
有機化学の知識だけでなく、これら装置の原理を理解することで、より効率的にプロセス開発ができるようになると思います。
様々な知識を身に着け、より優れたプロセス化学者になりましょう!
本日も読んでいただき、ありがとうございました。
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