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プロセス化学とメディシナル化学の違い

みなさんこんにちは!

以前、プロセス化学とはという記事を紹介しました。

その記事はこちら→ http://eggman87.com/process-chemistry/


本日はプロセス化学とメディシナル化学の違いについて説明します。


有機化学を専攻し、製薬業界での就職活動を考えている学生にとって、メディシナル化学の道に進むかプロセス化学の道に進むかは大きな分岐点になると思います。


この記事を読み、両者の違いをざっくりとイメージしていただければと思います。



それでは早速、項目ごとに違いを述べていきます。

目的
メディシナル化学
医薬品となる候補化合物を見出す
メディシナル化学は新薬となる候補化合物を見出すことが目的です。
有用な化合物が見つかるまで、ドラッグデザインを重ね、候補化合物を見出します。

プロセス化学
実生産に向け、合理的な合成ルートを開発する
プロセス化学は、その化合物を合理的に合成する方法を見出すことが目的です。この「合理的」については後述します。



必要な周辺知識
メディシナル化学
有機合成化学の他に、薬理学、薬物動態学、安全性などの生物化学系分野の周辺知識
メディシナル化学で必要となる生物化学系分野は薬学部の大学で一般的に学ぶ分野です。

プロセス化学は
有機合成化学の他に、化学工学、安全工学、製造設備などの周辺知識
プロセス化学で必要な知識は、ラボスケールから実機スケールへスケールアップする際に必要になってくる知識です。



合成法について
メディシナル化学
経済性はあまり気にしない
メディシナル化学の最大の目的は医薬品候補化合物を見出すことです。それを達成するためには合成法はどんなものでもよく、合成にかかるコストは気にしません。

プロセス化学
経済性が良いものでなければならない
プロセス化学の目的は合理的なルートを開発することです。大量に製造できることはもちろん大切ですが、コストがかかる製造法では会社の利益に貢献できません。プロセス化学者は経済性も考慮する必要があります。



原料や試薬について
メディシナル化学
値段や大量に入手できるかは重要ではない
メディシナル化学は医薬品開発候補化合物を合成することが目的であるため、高価な原料や試薬を使ったり、少量しか入手できない原料や試薬を使ったりしても問題はありません。

プロセス化学
安価でかつ大量に入手できるものでなければならない
プロセス化学は経済性の良い合成法を開発するため、安価な原料や試薬が望まれます。
安価であることと同時に大量に入手できるかを考慮する必要があります。いくら安価でも、少量しか供給してもらえない場合があります。プロセス化学は大量に合成することが求められるため、それに伴い大量の原料・試薬が必要になります。このため、安価でかつ大量に購入可能な原料・試薬が求められます。



収率
メディシナル化学
全工程収率が悪くても問題ない
繰り返しになりますが、メディシナル化学の目的は医薬品候補化合物を見出すことなので、収率にこだわる必要はありません。

プロセス化学
全工程収率の向上が求められる
プロセス化学は開発するルートの総収率はコストに直結するため、各工程での収率を改善し、総収率を向上させることが必須です。



単離・精製手段
メディシナル化学
化合物が取得できれば、手段は何でも良い
メディシナル化学はカラム精製での化合物取得や、薄層クロマト板からのかき取りなど、いかなる手段を用いても目的の化合物さえ単離できれば問題ありません。

プロセス化学
晶析による単離や精製が望まれる
プロセス化学は大量スケールで実施するため、カラム精製は第一選択としてはあがりません。大量のカラム、溶媒が必要になりますからね。結晶化により目的化合物を単離・精製することができないかを考えます。
結晶化がどうしてもできないとなれば、その他の手法を考えます。

私は大学時代、カラム精製しかしたことがなかったため、初めは違和感しかありませんでしたが、すぐに慣れました。



取得する特許
メディシナル化学
物質特許が主体
メディシナル化学は物質特許(開発候補化合物やその類縁物質)を取得を目指します。特許を取得できれば、その化合物は他社では使用できなくなります。

プロセス化学
製法特許が主体
プロセス化学は開発した合成法で製法特許取得を目指します。こちらも同様、特許を取得できれば、その製法は他社では使用できなくなります。



以上、簡単にですが比較を示しました。

見てわかるように、同じ有機合成化学が基盤のメディシナル化学とプロセス化学は、目的や方法が全然違いますね。

この違いをイメージし、将来どんな化学者になるのかを考えるための参考になれば嬉しいです。


読んでいただき、ありがとうございました。

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